BL小説集
□おまけ
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「剛崎がここに越すとのことですので、彼の荷物をこちらに」
「おや、守崎さん。ああいや盟主どの、すみませんねえ、言ってくだされば、取りに向かいますのに」
「とんでもない、うちの剛崎をよろしくお願いします」
「いやいやこちらこそ、うちの甥でいいんですかねえ」
守崎希昭は後処理にポチテカをあちこち回っている。だがそんな疲れは微塵も見せず、にこにこと対応している。
故にラートは少し大げさに歓迎し、相手の慰労をした。
「いやあまさかあの剛崎が結婚とは、世の中何が起きるやら……」
「それがうちの甥ときた。いやね?喜ばしいのは確かだが、不安が大きくて」
ギドの死んだ父親の代わりをしてきたラートは、思わず嘆息した。甥は三十路を過ぎたが、まだまだ危なっかしいガキに見えるのだ。
「それはこちらの方が……荷を見ていただければ、剛崎の人となりが解るかと」
希昭は本人の許しも得ず、勝手に荷を解いた。
しかし勝手に見ても支障無いほど、大したものは無かった。
中身はアルヴァ軍服と刀が十本。そして朱塗りの長弓と黒羽の矢が数本だった。
「……装備ですな」
「これが、剛崎の持ち物全てです」
「はぁ?」
ラートは素っ頓狂な声を上げた。生活感も人間らしさも一切無い、ただの装備品だ。
もしこれが本当だとすれば、剛崎夕星という男が、いかに戦に生涯を捧げてきたかが解る。
ラートは思わず頭を掻き、こぼした。
「大丈……ばないかも」