BL小説集
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アザゼルはそれに答えることができなかった。原因ごと、忘れているようだ。
それを見たベリアルは思うところがあるらしく、魔王のもとへ帰った。
ようやっと落ち着いた、とルートヴィヒはおやつの時間に入った。
戦争は一旦、落ち着きを見せている。王はまだ満足に立てず、ヘルガは何も言わない。魔王のことすら、口を出さない。
いっそ不気味ではあるが、また昔のように、表面だけでも和平を結べるのであれば良い。
すぐりの砂糖煮をたっぷりクッキーにつけ、これまた砂糖を入れまくった紅茶と一緒に食べる。
ルートヴィヒ自身も、なぜこんなに甘いものが好きなのかはわからない。好きだからでよいだろう。
「うまし」
砂糖煮をつつこうとする戴勝(やつがしら)を、鳥籠に閉じこめる。
王子は、菓子職人を優遇する調理場を作らせようとか、とてもどうでもよいことを考えていた。
「失礼します。殿下、葦弥騨盟主がおいでになられました」
そういえば呼んだ、と思い出す。
侍従に食器を片付けさせ、王子は談話室へ向かった。
白髪の貴人は、相変わらず人好きのする笑みで、ルートヴィヒと相対した。
王子は対面に座り、早速本題に入った。
「だいぶ遅くなって申し訳ない。アザゼルをお返しする」
「不要ですので、差し上げます」
即答で返品を断られ、さすがのルートヴィヒも動揺した。
「私も要らない……いくらで処分してくれるのだ」
『なんですかわたくしをごみの様にーっ?!』
アザゼルが顕現し、卓の上に乗った。そして紫儀之宮を見て、挑発する。
『おや、わたくしの可愛い子。そのように蔑ろにしないでおくれ』
「やつがれは殿下と話している」
紫儀之宮は神を一蹴し、追い払う。
「私がアザゼルを解き放った際、剛崎将軍に攻められた。何故、今になって不要だと」
「我らも扱いに困っておりまして……。アザゼルがいてもいなくとも、葦弥騨の今後に関係ありません」