BL小説集
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「いや〜ごめん!ロッカーの鍵あったわてへぐへあ!」
茶目っ気のつもりか、舌を出す佐東に、有二はラリアットを食らわせた。
思えば、こいつが原因で、晋哉の女装を見てしまったのだ。
有二は苛立ちを発散するように、佐東の頭を叩く。
「い、いたっ、悪かったって!まじごめんって!」
お調子者の佐東と、真面目な有二の、よくある光景だった。
とはいえ、中学からの仲のため、大した喧嘩ではない。
今日も今日とて、有二が一方的に痛めつけて終わりだった。
昼食時、弁当箱の蓋を開けた有二だが、すぐに閉める。
「……購買行ってくる」
「は?なして?つか今から行っても何もないぜー」
佐東の言う通りである。有二は椅子に座り、天命を受け入れようと、弁当箱を開けた。
「……えっ」
佐東が真剣に驚くのも無理はない。
中には白米がぎっしり詰まれ、真ん中には梅干しがひとつ。
所謂、日の丸弁当というものだ。
「……なに時代?」
「やめろ、それ以上突っ込むな」
恥ずかしげに、いそいそと弁当をしまう有二。
さてどうしようか、と考えた時、携帯電話の呼び出し音が鳴った。
父からだった。有二は席を立ち、教室を出て廊下まで行く。
「何、父さん」
『いやあ有二、弁当は大丈夫かい?』
言葉から察するに、父もそうなのか、と有二は驚く。
晋哉は、実父には甘いだろうと思ったが――