BL小説集
□おまけ
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術後から三ヶ月たち、王妃の容態が安定した所で、ようやっと子供とのお目通りが叶った。
二人の乳母が、それぞれの子を抱いて、わざわざ寝室まで来た。
「こちらがルートヴィヒ殿下ですわ」
「こちらがエバ様です」
乳飲み子ゆえに、まだ性差は表れてはいないが、それでも顔つきが似通っていた。
褐色の肌に黒い髪は父親譲りだが、鈍色の瞳はフリードリヒのものと同じだった。
「か、かわいっ」
素直な感想をもらすと、乳母らは微笑んで、赤子を篭に寝かせた。
フリードリヒのか細い腕では、赤ん坊などとても持てやしない。
エバの柔らかい頬をつつき、和みまくる。
すると、やられっぱなしではすまぬとばかりに、エバがフリードリヒの銀髪を引っ張る。
「あはは、いたいー」
とはいえ赤ん坊は容赦を知らない。
あまりに引きすぎて、髪が何本か抜かれたが、フリードリヒはそれでも子が可愛くて仕方なかった。
一方、ルートヴィヒは身じろぎもせずに、ぼけーっとフリードリヒの方を見ている。
「殿下は大人しいですねー」
「ええ、夜泣きも少なくて、驚くほど手がかかりませんわ」
突然、エバがぐずり始めた。あっという間もなく、火がついたように大泣きする。
それにつられてか、ルートヴィヒまで泣いてしまった。
「あらあら……どうしてか、泣くのは決まって同時ですわ」
「双子というのは、不思議なものですね」
乳母が抱き抱えてあやせば、たちまち落ち着き、涙が引く。
それを確認し、再び篭に戻した。