BL小説集
□./Ruf
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教会には神の力を扱う神子という存在がいるが、彼らでさえ、預言はできない。
教会よりも歴史のある魔女にも不可能。すなわちフリードリヒは、この世で唯一の預言者だった。
「この事実を存じているのは?」
「陛下と侍女の皆と、ダイケン殿だけです。ばれたら困るかなって、お外にも出てません」
妃の賢明な判断に、宰相は頭を下げた。
神に意識を奪われ、異常なまでに眠っていた頃は、誰もがフリードリヒは大人しく、感情の起伏も低い人だと思っていた。
しかしそれは、ひどい眠気により、表情や感情表現が乏しいだけだ。
本来は素直だが大胆で、好奇心旺盛な明るい性格だ。よく笑い、表情もころころ変わる。
そんな人が長い期間、私室に閉じこもる事は、どれだけ苦痛だったろうか。フリードリヒは慣れているというが、ダイケンは首を横に振る。
「この問題は、早急に解決致します。
王妃様が快適に生活できるよう配慮するのも、王の忠臣の務めなれば」
「感謝します。よかったです、ダイケン殿がいてくれて」
宰相が一礼して退室し、暇になったフリードリヒは、窓から外を見た。
文字の読み書きは、生活に支障ないほどに上達した。
今は王室礼儀や口上、外交のうえで必要な挨拶などを習っている。
「ここは鳥さん来ないなー」
余暇はもっぱら、私室の窓から、廊下と外苑を眺めている。
働く侍女や衛兵らの姿がよく見える。あちらがフリードリヒに気づくことはないが、本人はそれでもよかった。