BL小説集
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「何を寝ぼけている」
夢を見ていたらしい。寝台から落ちていた。
エンディミオに抱えられ、フリードリヒは目を覚ました。
「陛下、ど、どうされましたか?」
「様子を見に来ただけだ。これはそなたの物か?」
エンディミオが床に落ちていた小さな鏡を渡す。
黒耀石を磨いた鏡であるが、曇っており、何も映さない。
(あれ、夢じゃなかったのか)
フリードリヒは鏡を受け取り、枕元に置いた。
二人並んで、寝台に座る。
「陛下、御子が双子というのは、本当ですか?わたくしはまだ、ちゃんと見ていなくて」
「私も信じがたいが、事実だ。しかも男女のな」
民衆からは、王の子ではないのでは、という声もあるが、それはフリードリヒの知る所ではない。
「お名前、決まりましたかー?」
「ああ、男はルートヴィヒ。女はエバ」
「わー、早くお目見えしたい」
「……そなた、異常なまでの眠気はどうした」
痛い所を突かれたが、いずれはばれる。
しかし、神を宿していないと知れれば、フリードリヒの価値は失墜する。
「んと……その」
「まあいい。面倒が減るだけだ」
王の発言に、ひどく驚く。
フリードリヒは神があればこそ、の存在なのだ。
「陛下、そのぉ……」
「何を勘違いしているか知らぬが、そなたは教会のものではなく、私の妻で、この国の王妃だ。それに文句を言う者はおるまい」