BL小説集
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「フリードリヒ、平和の君主」
「父様……」
フランツの肩に、金糸雀が止まる。白い羽毛の、金糸雀が。
「もたらされたものに気づかねば、お前は何も救えない」
「何を、おっしゃっているのですか?」
「ついて来い」
これは“忌まれし森"の罠ではなく、また別の何者かの干渉だと理解した。
フリードリヒは不思議と恐怖もなく、父の背を追った。
長い廊下から、角を曲がり、庭園に入ったところで、父の姿は無かった。
代わりに庭園の中心には、黒耀石の刃に貫かれ、固定された“忌まれし森"の姿が。
「……あの、父様を、見ていませんか?」
「ささ.さあね→白い小/鳥ならば:いた/たよ」
呑気に質問するフリードリヒに、森も呑気に答えた。
フリードリヒはしばし周囲を巡りて父を探すが、見つかることはなかった。
そうこうしているうちに、翡翠がフリードリヒの肩に止まる。
「わたしの愛しい子。どうかしましたか」
「んと、なんでもないです。
あ、そうだ。聞きたいことがあったんです」
「どうぞ」
「なぜ“忌まれし森"は、生まれたのですか?」
むしろ、なぜ今までこの疑問を持たなかったのか。
“忌まれし森"は何も言わず、フリードリヒを見ている。
「生まれた、という表現は正しくはありませんが、まあいいでしょう。情報を開示します」