BL小説集
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フリードリヒは不快感とともに目を覚ました。口内に羽が入ったような感覚があるが、それは単に口を洗浄していないからだ。
夢とは違う気温の高さ、見慣れた寝台が、妙に懐かしい。
何日間寝入っていたのか、体は重く、起き上がるのにかなり苦労する。
寝ぼけ眼で周囲を見ると、何故かすぐ傍にエンディミオが居た。
(なんだ、まだ夢か)
もう一眠り、というところで、強く耳を引っ張られる。
この容赦の無さは、確かに暴虐王その人だ。
「へ、陛下ぁ……」
フリードリヒは慌てて乱れた髪を撫で付け、ぎりぎり無礼にならないよう、身なりを整える。
その間もエンディミオは、無表情で妻を見ていた。
「……んと、陛下ー。御、用は……」
「そなたが寝入っている間に、ヘルガから親書が届いた。私と会談を望むそうだ」
フリードリヒは凍りついた。
仇敵の間柄とも言える、エンディミオとヘルガ。
その二人が会談、しかも魔女の方から願い出るなど、明日には世界が終わってしまうのか。
証拠として、エンディミオが親書をフリードリヒに見せた。
難解な単語は読めないが、型式は確かに会談申し出のそれだ。
「そなた以外に、あの魔女が動く理由が見つからぬ」
フリードリヒは冷や汗が止まらない。かといって、言い訳が思いつくはずもなく。
「は……はひ」
あっけなく降参した。