BL小説集
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改めて“忌まれし森"を見る。
刃に貫かれ身動きが取れず、蔦は絡み合うばかりで攻撃には転じない。
二人の王の腕は、幸いにも無傷だった。
「ぃぎっ/ひひ/ひ/ひどいなあ/あ/あ」
「喋れるの、ですか!」
仮面の下、人でいう喉のあたりに、声帯と舌が動いている。
剥き出しの器官に、フリードリヒは吐き気を催した。あれも、誰かから奪ったものなのか。
「こ/こここでも/痛い/のはいたたいもの」
男女の区別がつかない幼児の声音で、“忌まれし森"は文句を垂れる。
「あの、どうしてあなたは、他人の手足を奪うのですか?」
意思の疎通が可能ならば、それほど恐ろしいものではない。奇怪な姿は、無理に見なければ良い。
「ななな/に.くく:くれるんじゃ/ないの/の/肺:肺をちょうだい」
「あげられないです。何故、奪うのです?皆、困ってます」
フリードリヒは気丈に断る。次代を生む使命を持つ者として、それだけは避けねばならない。
“忌まれし森"は残念そうに唸ると、理由を告げた。
「だっ/て/ふたつつつつあるなら:ら.いいで/しょ片方/もら/ってても」
「駄目だと思います。んと、ふたつあって、成り立ってるんです」
エンディミオとヘルガは、全く不便さを感じさせないが、フリードリヒはあくまで自分の考えを伝えた。