BL小説集
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夕食を済ませ、尚こんこんと眠りつづけるフリードリヒ。
熟睡しているというに、つと、額に冷たい感触があった。
「……ん、ケツァル、コア、ふあああぁ」
「すみません。ですが起きてください」
蛇がしぺろと舌を出し、フリードリヒを舐める。
ケツァルコアトルがフリードリヒを起こすことは初めてで、何事かと起き上がる。
「この、蛇は……」
「これはわたしの身体の一部ですよ。あなたが怖がるかと思いまして、花に擬態させていましたが、杞憂でしたね」
ケツァルコアトルが手を翻すと、枕元にある灯火が点火した。
「来ましたか」
虚空から、灰に薄汚れた白鷺が現れた。
「それ以上近づかぬよう、夜の風がお前を裂きます。イツテラコリウキ」
あのみすぼらしい鷺が、夢に見た石像の化身らしい。
またもヘルガが何かを仕掛けるのかと、警戒するフリードリヒだが、イツテラコリウキは普通に話しかけてきた。
『我が魔女はああ言うが、やはり呪いを解くには貴様らの力が必要だ。我々は協力を惜しまない』
「……ちゃんと、お話、できるんで、すね」
「わたしが翻訳しています。ではイツテラコリウキ、わたしたちと盟約を交わしなさい」
どこまでも能天気なフリードリヒはさておき、ケツァルコアトルが話を進める。