BL小説集
□二
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――フロレンツ、貴方は優しすぎます。そこまでする必要性は、どこにもないでしょう?ありませんよ
――セシル、あなたは必要性だけで私に依存しているのですか?……今更、聞くまでもないか……
――最近のフロレンツはおかしいです。変です。何かあったのですか?
――……何も問題はありません。わかりました。そこまで言うならば、私は封印の間を貴方の代わりに見張っていましょう
――それは嬉しいです。誰より信頼する貴方ならば、セシルは安心です
窓はおろか時計もなく、彼の感覚は狂いそうになっていた。
もし一人きりであったら、とうに発狂していただろう。
何故か部屋には鍵がかかっており、押しても引いても開かない。
寝台に拘束されている男に聞いても、何も答えがない。
食事は一日に二度、部屋に運ばれていた。
何者かが部屋の掃除や服の洗濯、食事の用意までしている状態。
そのため、彼には男しか頼るものがないという、非常に不安定な環境にある。
だが寝台に拘束され、身動きが取れない男の世話をする内、彼はそれに満足を覚えた。
礼がわりか、頭や頬を撫でられることが年甲斐もなく嬉しく感じ、彼としてはこのままで良くなっていく。
ぬるま湯のような幸せとはこういう事を指すのだろうか。
人ではないであろうこの男だが、彼にはあまり関係がなかった。