BL小説集
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好都合だと、フリードリヒは願い出た。
「あの……ケツァルコアトル様……契約、して、くださいません、か?」
「まさかあなたから、その言葉が出るとは思いませんでした」
「……んとー、だめ、ですか?」
「いいえ。むしろ、喜んで。……ですが、打開策はあるのですか?」
「ないです……なので、森に詳しそう、な方に、お手紙を」
「……成る程」
二枚目の手紙は、兄に宛てるものより、よほど丁寧に綴っている。
間違いの無いよう、まして涎やインク染みなど、とんでもない。
だが内容は簡素で良い。出来上がったそれを、アレックス宛てのものに重ねて、侍女に渡す。
「書けたー」
「あら、もうお返事をしたためましたの?」
侍女は疑いもせず受け取り、届け出に部屋を後にした。
それを見送ったフリードリヒは、ケツァルコアトルに向き直る。
「お願い、しますー」
「あなたの望み通りに」
その言葉を最後に、フリードリヒの意識は、ぷつりと途切れた。