BL小説集
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このところ、宰相ダイケンは機嫌が良かった。
先日に、経費を観光に使い込んだ外交官をそのまま国外追放したが、そんなことを忘れてしまうほど、良いことの連続だ。
何しろ、王妃が懐妊したのだから。
それだけではない。フリードリヒは、妃の最長記録を更新中だ。
いままでは二人目が半年もっただけだった。
しかもエリッサによれば、夫婦仲は悪くはないらしい。
これから、ダイケンをはじめとする大臣や官僚は、王妃の機嫌をとる対応をせねばならない。
ダイケンは時間の空いた他の大臣を連れ、王妃の部屋を伺った。
「フリードリヒ様、この度は御懐妊、おめでとうございます。」
「ありがとう……ございまふああぁ」
普通なら、妊娠ごときでここまで騒ぐことはない。
だがあの暴虐王が、ようやっと、という感じなのだ。王家の明るい話題は、過剰といえるほど取り上げるに限る。
ダイケンは用意した献上品と、一通の手紙を差し出した。
「こちらは我々から。このお手紙は、ロメンラル伯爵、貴方さまの兄君からです」
「……アレク兄様の?」
宰相からの献上品には目もくれず、伯爵からの手紙を読むフリードリヒ。
夢中になる王妃を、和やかな目で見る。
このまま、何事もなく、平穏に過ごせれば良いが。