BL小説集
□3
18ページ/35ページ
普通なら、妃とそのお付きは道を開き、王に頭を下げるもの。
だが何を思ったか、フリードリヒは過ぎ去るエンディミオのマントの端を掴んだ。
足止めを食らった王は、憎らしい敵を見るかのごとく、フリードリヒを睨みつける。
「え、あ、あのぉ……」
エンディミオの怒りによる圧力に、さっぱり言葉が出ない。
王を煽るその行動に、大臣や侍女たちは今にも卒倒しそうだ。
舌打ちをしたエンディミオは、意外にも周囲の者らを人払いした。
エリッサのみ、最後まで残ったが、フリードリヒが頷いたのを見て、去っていく。
怯える妃に向き合い、エンディミオは懐中時計片手に話しかける。
「割ける時間は一分だ」
厳しすぎる宣告に、慌てふためくフリードリヒ。うっかりどうでもよい事を言ってしまう。
「ああの陛下、わたくしえーと子供をー……授かり、まして――」
「知っている」
ばっさり切り捨て、そんな下らん事のために止めたのかと、さらに威圧をかける。
「そそうじゃなくて、んと……こちらに、来た時からー……考えて、いた、んです」
ああ、どうせ殴られることは目に見えている。
ならば言ってしまおうと、フリードリヒは手を握る。