BL小説集

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 普通なら、妃とそのお付きは道を開き、王に頭を下げるもの。

 だが何を思ったか、フリードリヒは過ぎ去るエンディミオのマントの端を掴んだ。

 足止めを食らった王は、憎らしい敵を見るかのごとく、フリードリヒを睨みつける。

「え、あ、あのぉ……」

 エンディミオの怒りによる圧力に、さっぱり言葉が出ない。
 王を煽るその行動に、大臣や侍女たちは今にも卒倒しそうだ。

 舌打ちをしたエンディミオは、意外にも周囲の者らを人払いした。
 エリッサのみ、最後まで残ったが、フリードリヒが頷いたのを見て、去っていく。


 怯える妃に向き合い、エンディミオは懐中時計片手に話しかける。

「割ける時間は一分だ」

 厳しすぎる宣告に、慌てふためくフリードリヒ。うっかりどうでもよい事を言ってしまう。

「ああの陛下、わたくしえーと子供をー……授かり、まして――」

「知っている」

 ばっさり切り捨て、そんな下らん事のために止めたのかと、さらに威圧をかける。

「そそうじゃなくて、んと……こちらに、来た時からー……考えて、いた、んです」

 ああ、どうせ殴られることは目に見えている。
 ならば言ってしまおうと、フリードリヒは手を握る。
 
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