BL小説集
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「フリードリヒ様、旬の果物ですわ。以前、酸っぱいとおっしゃられていましたから、蜂蜜をかけましたの」
「こちらは、リウォインから取り寄せた砂糖菓子ですわ」
お茶の席で、必死に王妃の機嫌をとる侍女たち。
一方主は、彼女らの話なんぞどこ吹く風。
いつも以上にぼんやりと、明後日の方向を見ている。
ここ数日、フリードリヒはずっとこんな調子だ。
ただ眠いだけかと思いきや、初めて見る菓子や、甘いおやつにも興味を示さない。
「……あ」
ふいに、フリードリヒは手を滑らせ、紅茶の入った杯を傾けてしまった。
侍女は慌てることなく、的確に対処する。
「あら、お怪我などございませんか?すぐに新しく入れますね」
「……ごめん」
「どうされましたの王妃様。どこか具合でも?」
心配した侍女が声をかけれど、フリードリヒは卓の端を見て一言。
「……今、なんかしました?……そうですか」
「フリードリヒ様っ?」
突飛な独り言に、周囲は動揺を隠しきれない。
堪えかねた一人の侍女が、エリッサを呼びに部屋を出た。