BL小説集

□雲雀料理
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「……『春になつて、
おれは新しい靴のうらにごむをつけた、
どんな粗製の歩道をあるいても、
あのいやらしい音がしないやうに、
それにおれはどつさり壊れものをかかへこんでる、
それがなによりけんのんだ。
さあ、そろそろ歩きはじめた、
みんなそつとしてくれ、
そつとしてくれ、
おれは心配で心配でたまらない、
たとへどんなことがあつても、
おれの歪んだ足つきだけは見ないでおくれ。
おれはぜつたいぜつめいだ、
おれは病気の風船のりみたいに、
いつも憔悴した方角で、
ふらふらふらふらあるいてゐるのだ。』」






 期待と不安でいっぱいであった高校の入学式も、過ぎれば早いもの。

 早くも一週間が過ぎ、見慣れはじめた景色を、窓側の席でぼうと見る。

 羽曳野(はびの)浩太郎(こうたろう)は、散りゆく桜を見ながら、欠伸をひとつかました。

 授業間のわずかな休憩だが、このひなたぼっこはたまらない。

 席が名前順でよかった、と一人はにかむ。

 と、まだチャイムが鳴っていないにも関わらず、次の授業を受け持つ教師が入ってきた。
 
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