BL小説集
□2
33ページ/35ページ
「だからー、その、ありがとう、ございました……」
「この数日、それだけを考えていたのか」
「あ、あええと、もひとつ……」
搾り出したような礼も、当然とばかりに受けるエンディミオ。
会話の機会が少ないフリードリヒは慌てて、とんでもない付け足しをした。
「あの、わたくしは……陛下のことあんまり……好きじゃない、です」
黒獅子王の凍てつく視線を受けながらも、フリードリヒは言い切った。
「もう無理は、よします。尊敬は、してる、んですー……ですから……」
「だから何だ」
この期に及んでもまだ迷うフリードリヒの言葉を、エンディミオが促す。
覚悟よりも諦めに似た感情で、王妃は誓う。
「役割は、果たします……陛下の真意は、もういいです……わりきり、ます」
フリードリヒは俯き、来るであろう暴行に備えて奥歯を噛み締める。
しかし予想に反し、力強く顎を捕らえられ、王と視線がかちあう。
顔を背けることさえ許さずか、とフリードリヒがいろいろ諦めた時、久々にエンディミオが微笑した。
「ようやく王族というものがわかったか。そうだ、愛や恋などの夢物語なぞ、私は、国には不要」
エンディミオは顎から手を離し、フリードリヒの白い頬を撫でる。
「今までの妃共は下らぬ連中ばかりであったが、そなたは王妃として認めてやっても良い」