BL小説集
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封筒を閉じる蝋に押された紋章と、差出人を再度確認すれば、確かにロメンラルからであった。
だが差出人の名はアレックス・ケーフィンとある。伯爵の名はフランツのはずだ。
改めて手紙を読み、エンディミオは宰相を呼び付ける。
「陛下、どうなさいましたか」
「読め」
手紙を押し付け、宰相が読み終えるまで待つ。
手紙を返したダイケンは、沈痛な面持ち。
「陛下……どうなさいますか」
「どうするも何も、そのまま王妃に伝えろ」
「それはそうですが……とはいえあの方はまだお若い」
「それがどうした」
それだけ言い、エンディミオは作業に戻る。
ダイケンは一礼し、もう一度手紙を読み直す。
「私が直接、お届けしてもよろしいですか?」
「好きにしろ」
許しを貰い、宰相が執務室を出る。
足早に王妃の寝室に向かいながら、ダイケンは溜息をつく。
手紙の内容は、ロメンラル伯フランツ・ケーフィンの訃報であった。
寝台で、シーツに包まりながら手紙を読んだフリードリヒは、取り乱すこともなく、文をエリッサに預けた。
「……父様、今まで……病気な、んて、ひとつも、なかった、のに……」
「フリードリヒ様、どうかお気を確かに」
「だ、いじょうぶです……んと、僕はどーしたら、いいのでしょう」
涙ひとつ浮かべないフリードリヒに疑問を覚えつつも、ダイケンはこれからの段取りを教えた。