BL小説集
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歩いては食う寝る、を繰り返した結果だろうか。一週間後には、フリードリヒの食欲は目に見えて増え、血行も良くなってきていた。
慢性的な栄養不足および運動不足の解消からか、自然と文字の読み書き勉強も進む。
だが、眠る時間も日に日に増えていった。
本人はおろかロメンラルの侍従も、フリードリヒの睡眠時間を計測などしていなかったらしい。
これは医師がエリッサに言い付けて初めて明らかになったものだ。
うっかり意識を飛ばした回数、昼寝の総数も合わせると、人間こんなにも眠れるのかと唸りたくもなる。
医師は医療記録を読み直し、だが患者に余計な不安を抱かせないよう、嘆息は飲み込む。
「ふあ……ぶぅえっくしょい!!……うえー」
「あらまあ、景気の良いくしゃみですこと。ですがもう少し、紳士的におすませなさいな」
意外とおっさん臭いくしゃみを咎めながら、エリッサはハンカチでフリードリヒの鼻水を拭う。
まるで親子だと主従を見ていた医師だが、仕事を思い出し、妃に向き直る。
「申し訳ありませんがエリッサ殿、席を外していただけませんか?これは教会的にも内密の話ですので……」
「わかりました。扉の前で控えております……皆、手を休めて着いておいで」
エリッサが部下に呼びかけると、侍女たちは仕事の手を止め、侍女頭に続く。
途中で妃に一礼する者や、新しい水差しを置いていく者もいた。