BL小説集
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「くあぁ……うう……でも、体力て、どうやって……つけるの?」
「そうですわね……まず軽く、近くの庭でも歩きませんこと?少しは日に当たるべきです」
とはいえ、北部生まれのフリードリヒが、アルヴァの日差しを直に浴びては毒だ。
エリッサは日傘を持つよう他の侍女に言い付けていると、フリードリヒがいつになく、驚いた顔をしていた。
「外、出て、いいの?」
「……はい?」
王妃の言葉に、部屋中の侍女たちが一斉に主を見る。
エリッサが戸惑いながらも、返事をする。
「ええ、もちろん……というより、あなた様はいつでも、この王宮内をお好きに歩けますよ?城外は難しいですが……」
うんうん、と他の侍女たちも頷く。
フリードリヒは子供みたく瞳をきらきらさせて、聴き入る。
「ほんと?……わ、わ、いいなあ」
貴方のことを話してるのよ、という一言を飲み込み、エリッサは引き攣った作り笑いを浮かべた。
「喜んでいただき、ようございましたわ。しばらくは私たちが付きますが――」
「え、うん……いいよお。外出ていい、んでしょう?」
身を乗り出し、寝台から落ちそうなフリードリヒをなだめ、侍女たちは準備を始めた。
誰かが思わず、おいたわしや、と呟いたが、憐れな主は気付かない。