BL小説集
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日の光が地にも届かぬほどに、鬱蒼とした森。
朝か夜かも判断がつかない森には、たくさんの生と死が溢れていた。
つと、白い仮面の何かがいた。
緑の蔦で構築された、偽りのからだ。
声がする。大勢の人の声。
仮面の何かと対峙するは、赤い兵士と、藍の兵士。
だが兵士たちは、次々に蔦の攻撃を受け、倒れていく。
仕方ない、とばかりに出てきたのは、二人の人物。
一人は凄まじい剣技で。一人は不可思議なる魔法で、仮面と渡り合う。
ああ、だが、木々の死角から蔦が二人に伸びる。
かろうじて避けたが、一人は剣を持っていた左腕を。一人は短槍を持っていた右腕を、それぞれ引き千切られた。
腕は仮面のからだに吸い込まれ、いびつなる両腕となる。
屈強な褐色の左腕と、華奢な白色の右腕に――
「ッあ、ああああ!?」
両腕を駆使し、這うように起き上がる。
白いシーツの、寝台が目に入る。
「あ、あ……ああ……」
「フリードリヒ様、いかがなさいまして!?」
悲鳴を聞き付けたエリッサが、天蓋布を勢いよく開く。
「……う、あ」
何と説明したものか。悪夢というには、性質が悪すぎる。
「ああ、おいたわしや。ゆっくりとお休みなさいませ……」
柔らかい布で、そっと涙を拭われる。泣いていたのか、とフリードリヒは呆然とした。