BL小説集

□トロイメライ
2ページ/30ページ

 
 むかぁしむかしのはなし。

 とある豊かな南の国の王様は、とっても有能で、とんでもなく残酷でした。

 その武芸と軍事はどのような戦にも負けませんでしたから、国にとっては英雄です。

 ただ、王様はすばらしく我が儘で手が速いので、嫁いだ妃は皆、逃げてしまいました。

 このままではお世継ぎがいません。

 困った宰相や大臣たちは、とある北の小国の姫を召しました。

 どこの国も嫌がる、かの王様の妃を、その姫だけが申し入れたのです。

 けれどもやっぱり、姫も普通とは違いました――






 世界中、探しに捜しつくした妃を迎えるというに、王は欠伸なんぞかましていた。

 浅黒い肌の筋肉は逞しく、政治家としても武芸家としても、申し分ない王者。

 ただ人間としてはいまいちだ。

 筋の通った意見なら聞くが、ただの我が儘ならば許さない。

 ちょっと寝坊したり、勝手に外を出歩いたとかいった理由で反逆者と罵られ、殴られた元・妃は今まで四人。

 そのうち三人は国へ逃げ帰り、一人はこの世から逃げた。

 大陸南部に位置するアルヴァ王国は、特に男尊女卑ではない。

 むしろ、実力主義を旨とするが故に誰にも上にいける機会がある。

 作物が豊富で、余裕があることから、男女の差別なく民は暮らしている。

 そんな国に嫁いだのに、こんな暴力的な夫とあっては、逃げたくもなるだろう。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ