BL小説集
□トロイメライ
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舞台についたエンディミオは、自身の左隣にフリードリヒを立たせる。
聖印をいじっていた司祭に、目で合図を出す。
司祭は一礼し、高らかに声を上げた。
「おお、幸福成。アルヴァ王国十一代国王エンディミオ様の婚礼儀式を開式いたします」
司祭は目を二人に向け、宣誓の文句を告げる。
「では、エンディミオ・ゾンスト・ジリオムダール」
「ああ」
怒りやら苛立ちやらを圧し殺した声が、静かな広間に響く。
「あなたは生涯、隣の方を愛し、共に添い遂げることを誓いますか?」
「……誓おう。私は、私の誇りと命にかけて、この者との愛を遂げるだろう」
なんだ、今の間は。と考える間もなく、フリードリヒの番がきた。
「フリードリヒ・ケーフィン」
「は、はい」
「あなたは生涯、隣の方を愛し、共に支え合うことを誓いますか?」
「誓い、ます。私は、私の力と意志をもって、この方と共に、在ります」
なんとか欠伸は堪えた。
司祭は微笑むと、懐から金の腕輪を二つ、取り出した。
「では結婚腕輪を、相手方につけてあげてください。手への口づけも忘れずに」
エンディミオは腕輪を取り、フリードリヒの左手を乱暴に掴んだ。
少し屈み、白く細い手に恭しく口づける。
悲鳴をこらえるのに必死で、固まっているフリードリヒに腕輪を通す。