BL小説集
□トロイメライ
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がちゃん、と音がたった後、一瞬だけ時が止まり、そして騒然とした。
王を交えての大臣と将来の妃の会食。
大臣たちも神憑きの者とあらば文句はないようで、珍しく和やかに食事は進んでいた。
そんな空気をぶち壊すのは、やはりフリードリヒその人。
眠気に負けたらしい。ちょうど運ばれたばかりのスープ皿に顔からダイブした。
水(スープ)深一センチで溺死しそうなところを、待機していた侍女たちが救出。
「フリードリヒ様、お怪我はっ?」
「呼吸はしています。大丈夫……冷製スープだったことが幸いしたか……フリードリヒ様、動けますか?」
「……んー」
弱々しく頷いたのを確認したエリッサは、慌てる侍女たちに素早く仕事を命ずる。
「申し訳ございませんが、フリードリヒ様はご気分が優れないようで――」
「構わん。戻せ」
退席を願い出るエリッサを遮り、エンディミオがさっさと命令を下した。
「感謝します、陛下。皆、湯浴みと寝台を用意しておいて」
そこからは素早い。フリードリヒを支え、侍女集団が出て行った。
さてエリッサも出ていこうか、とした時、何者かに呼びとめられる。
「あの者に無理をさせるな。余計な手間というものだ」
他の誰でもない、王の命。