BL小説2
□due
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「わーい、遠足えんそくぅー」
(こいつは拷問してから殺す、絶対殺す)
ユニオは本当に何も口にしていないようで、腹がしきりに鳴っている。
面倒くさいが、あまり蔑ろにしては不審だ。ジェラルドは厨房から軽食を貰い、ユニオに持たせたが、馬鹿貴公子は籠を持って外へ行きたがる。
「お家ですることないんだもん。つまんないのぉ」
「なら庭をぶらついていろ」
「お花とったら怒られるからやだぁ。
ねえにいや、お舟、あれ乗りたい」
チェンニーニ家の敷地を出てすぐに、海水と湖沼が混じり合う汽水湖(きすいこ)がある。
主に地元の人間が行楽や暇つぶしに来る事が多く、気ままに魚釣りをしている人の姿も見て取れる。
貴族の館を見物に来ているのか、遠目にチェンニーニ家の屋敷を見ながら、根も葉もない噂話をする者たちもいた。
「ディティも湖で遊びたいって。ねえいいでしょ」
「俺がお前を湖に突き落とすとは思わんのか」
「……あー!そっか。どうしよぉ」
あまりの阿呆らしさに、ジェラルドは嘆息した。美の女神の要望は嘘ではないらしく、鵠がジェラルドの足を催促するようにくちばしでつつく。
ジェラルドは復讐者として女衒(ぜげん)に堕したとはいえ、神への信仰心は捨てていない。
たとえ復讐対象に力を貸す存在だとしても、麗しのアフロディテには敬意を払うべきだと思っている。
魚釣り用の小舟にユニオを放り込み、ジェラルドは一本の櫓(ろ)で後ろから押して漕ぐ。
水場の多いヨシリピテ地域の人間は、その身分の差無く、舟を漕ぎ、長く泳げなくてはならない。
そんな基礎が全く身についていなさそうな馬鹿貴公子は、鵠を抱えて水面に浮かせた。
嬉しそうに水浴びをはじめる鵠を眺め、ユニオは籠の中の白パンをかじる。