BL小説2

□弐
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 ギドがあの忌まわしき力を発動させ、剛崎を傷つけたとは、もっぱらの噂になっていた。
 だが力比べを見ていた男衆は、先に加減を怠ったは将軍の方だと訂正した。ポチテカは諜報活動もするゆえ、間違った情報は厭う。

 首筋の怪我自体は、大したものではなかった。耳も無事だ。
 だが、ギドはすっかり意気消沈し、剛崎に近づこうとしなかった。

 それを見たカイは、なんとか兄弟を慰めようと、声をかける。言葉がおかしくなったばかりの頃を見ているようで、とても辛い。

「ギド、そんなに落ち込むな、お前らしくない。
将軍がやり過ぎたんだって、皆言ってるし、お前を変な目で見る奴は、そもそもあの場に参加してない」

<違う、加減できなかったのは俺だ>
<あの力の調整を上手くできた試しがない>
<放っといてくれ>

 こりゃ根が深いぞ、とカイは呻る。
 ギドは昨日から自室で座り込み、頭を抱えている。

 普段は底抜けに明るいために誰も気づかないが、ギドは誰にも相談しようがない悩みで苦しみ続けている。
 だから魔女がこの家に来た時、彼は大層喜んだ。せめて解ってくれる人がいたのだと、気持ちが楽になれた。

 というのに、よりにもよって殺しかけた。忌々しい、実に恐ろしい力だ。ついにはギドの大事なものまで消し去ってしまうというのか。

 カイが気を揉んでいると、慌てた様子でサラが部屋に入ってきた。

「ギド兄さん、ちょっと来て。将軍様の様子がおかしいの」

 それを聞いたギドは、弾かれたように立ち上がり、自室を出た。
 
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