BL小説2

□;[Sanctus]
2ページ/42ページ

 


 アルヴァ首都城下は、重要な政治施設が建ち並び、主にその施設の役人が通い歩む。
 実力主義を旨とするとはいえ、要職者にはやはり貴族階級かそれに次ぐものが多い。
 往来を走る馬車を見て、キサラは歓声をあげた。

「わあー、人いっぱい!建物おっきいー!」

 田舎者丸出しのキサラを見て、大人たちは笑い、時には迷惑そうに眉間に皺を寄せる。

 空間転移の酔いがようやく覚めたルートヴィヒは、キサラを宥めて連れ出す。

 アルヴァは元々山岳地帯を開き、埋め立てて街を造り上げてきた。そのため高低差が大きく、坂道が多い。
 設計技術の高度化により、徐々にだが坂の勾配(こうばい)は下がりつつある。

 とはいえ、慣れない者には辛い。キサラは裸足で石畳を歩いていたため、ルートヴィヒは市場まで行き靴を買ってやった。

「ありがとう。前使ってたのは壊れちゃったんだ」

 ルートヴィヒより年上のはずの魔女は、子供のようにあちこちを見ては感嘆し、隼とはしゃぐ。

 普通は戦争が起きれば物資が不足しがちだが、アルヴァは戦のためだけに機能する国といっても過言ではない。常に備蓄を確認し、元々温暖な気候によって作物には困っていなかった。
 人々の活気溢れる街は、そのままアルヴァの力強さ、豊かさを表す。

「ねー天狗、また遊びに来ていい?だめかな」

『だめとは言わん……言わんが……』

「やったー!次来たらいっぱい遊ぶー!」

 あまり外に出て欲しくない天狗は、しかしキサラの笑顔に複雑な気持ちになった。
 教会への道すがら、ルートヴィヒは森の魔女にいくつか訊ねた。
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ