BL小説2
□;[Sanctus]
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アルヴァ首都城下は、重要な政治施設が建ち並び、主にその施設の役人が通い歩む。
実力主義を旨とするとはいえ、要職者にはやはり貴族階級かそれに次ぐものが多い。
往来を走る馬車を見て、キサラは歓声をあげた。
「わあー、人いっぱい!建物おっきいー!」
田舎者丸出しのキサラを見て、大人たちは笑い、時には迷惑そうに眉間に皺を寄せる。
空間転移の酔いがようやく覚めたルートヴィヒは、キサラを宥めて連れ出す。
アルヴァは元々山岳地帯を開き、埋め立てて街を造り上げてきた。そのため高低差が大きく、坂道が多い。
設計技術の高度化により、徐々にだが坂の勾配(こうばい)は下がりつつある。
とはいえ、慣れない者には辛い。キサラは裸足で石畳を歩いていたため、ルートヴィヒは市場まで行き靴を買ってやった。
「ありがとう。前使ってたのは壊れちゃったんだ」
ルートヴィヒより年上のはずの魔女は、子供のようにあちこちを見ては感嘆し、隼とはしゃぐ。
普通は戦争が起きれば物資が不足しがちだが、アルヴァは戦のためだけに機能する国といっても過言ではない。常に備蓄を確認し、元々温暖な気候によって作物には困っていなかった。
人々の活気溢れる街は、そのままアルヴァの力強さ、豊かさを表す。
「ねー天狗、また遊びに来ていい?だめかな」
『だめとは言わん……言わんが……』
「やったー!次来たらいっぱい遊ぶー!」
あまり外に出て欲しくない天狗は、しかしキサラの笑顔に複雑な気持ちになった。
教会への道すがら、ルートヴィヒは森の魔女にいくつか訊ねた。