BL小説2
□>>Rex_Tremendea}
2ページ/46ページ
状況は最悪だった。
王と王女が倒れ、主力の兵のほとんどが動けなくなった。何よりも兵の持つべき装備が全く足りない。
製造はアルヴァ支配下のサイーラという工業国に任せているが、原料である鉄、その鉱山は教会が土地ごと所有している。
面倒なことに、教会宗主は戦争を厭うがゆえに、武器のための鉄は法外な値段で取引させていた。
一方の敵国リウォインも、同じく苦しい立場だ。女王自身に被害はなかったが、退却はアルヴァ側よりも遅れ、兵の犠牲は多い。
また、損害を出したヨシリピテへの言い訳も用意せねばならない。
どちらも痛み分け。アルヴァは慌てて剛崎以下、他部族の兵を呼び集めて国の防備を固めた。
両国の受けた痛手はあまりに大きい。いましばらくは相手の様子を窺いながら自軍を整えるしかない。
つまるところ、戦は中途半端に休止となった。
それだけのことをした者は、砂漠から忽然と姿を消してしまった。
極一部の者以外は、敵国の焼き討ちと思っているだろうが、鉄をも燃やす炎はそう簡単に起こせるものではない。
倒れた王に代わり、最高指導者となった王子ルートヴィヒは、激務の傍らで魔王の行方を探していた。
王妃が夫に託した預言を見て、ルートヴィヒは思案した。
結局のところ、全ては定まっていた。魔王は降臨し戦を焼き払い、黒獅子王は剣で歌を止めた。
虫の息であった父王を見た時には、流石のルートヴィヒも血の気が引いた。
懸命な治療が続けられてはいるが、即死していない方がおかしい。
エバはまだ動けないが、一命は取り留めたと報告があった。
『旦那様、どうか休息を。お体に障ります』
戴勝がルートヴィヒの肩に止まり、声をかける。それを追い払い、王妃が自身に託した預言の意味を考えた。