BL小説2

□金剛不壊
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 一生懸命に布を見定める子供を見て、ギドは微笑ましくなった。自分がこの歳の頃には、他と比べても背丈があったから、愛玩動物の管理を任されていた。今でもたまにやるが。

「おじさん、家に着いたら、槍を教えてよ」

<いいよ>

「やった、約束な」

<これが今日中に終わればな>

「ええー!」

 ポチテカ商隊の中でも、ギドは特に強い。戦争時にも、彼は商隊の一番槍として前線に立っていた。
 その戦争も、二年前に起こった砂漠の大火災で王が倒れて以降、和平を重視する王子によって、うやむやになっているが。

「おい、伯父貴!ギドも来てくれ!」

 カイに呼ばれ、二人は御者台に出る。指さす先には、走る馬の連なりがあった。
 一人の人間を、複数の馬で追っているようだ。

 この辺りの道は本街道を外れている。ポチテカが商いのために均(なら)してきた道だ。あまり他族に使われては困るうえ、この辺りはポチテカの領域。
 決まりなどは無いが、軽く注意をしておこうと、ラートが声を張り上げる。

「おおい、あんた達!ここより西はポチテカだ!いざこざは見えないところで――」

 がつっ、と音がした。矢が馬車に刺さったのだ。

「撃ったのかこの野朗ッ!どこの者だ!」

「伯父貴、あいつら葦弥騨(あしやだ)だ!舐め腐ってんじゃねえぞ!」

 白い髪に白い肌をした民族を、葦弥騨と呼ぶ。アルヴァ東部に住み、武器製造と出兵により栄えている。
 だが、はるか昔に戦争の引き金となったことにより、他民族からは嫌われている。

 馬に乗った男は、再び弓に矢を番える。ギドが槍を持って馬車を飛び出した。三人ならばともかく、中には子供が乗っているのだから。

「カイ、お前も行け!」

「応よ!」

 葦弥騨人はとても小柄で、ポチテカが負ける道理は無い。
 ギドが地面を蹴り、弓取りに槍を突き出す。一人を落とし、馬を奪った。
 無理矢理に手綱を引いて、他の葦弥騨人に向かう。

 追われている一人は、背に多くの矢を受けている。もう死んでいるかもしれない。
 
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