BL小説2
□Feuer bestattung
2ページ/46ページ
馬を預けた青年は、連れと話す。
「長に挨拶をしていく。ダニエル、お前は」
「アタシは先に休んでまさァ。もう一歩も歩けませんぜェ」
青年は自分の荷物をダニエルに押し付け、立派な箱馬車に入っていった。
「人使いの荒いやっちゃあなァ」
客人用の箱馬車に案内され、ダニエルは大荷物を苦労して入れる。
馬車の内部は、駱駝の革の屋根により、幾分か涼しい。
中では女達が、歓迎の歌を奏でいた。
ベリオールは詩歌を神に奉じる。歌は彼らの生業であり、人生なのだ。
ダニエルはろくに聴かず、出された茶と、平パンをちぎって食べる。
そうとう腹が減っていたものか、かっこみ、一息ついてようやく、ダニエルは粗末な外套を取り払う。
延び放題の赤い髪は、灰に汚れ斑になり、白茶けた肌は、かさぶたや傷だらけ。
なんというか、全体的に汚い。
ぼろのような服に、女たちは憐れみの視線を向ける。
そのうちの一人、溌剌そうな壮年の女が、ダニエルに問うた。
「あんた、リウォイン人かい」
「ああそうさァ。こっちの日射しは、アタシにゃきついねェ」
「リウォイン人は信用できん」
「ちょっと、アイゼヤ……」
無礼な女を、同胞が諌める。
しかしダニエルは歯牙にもかけず、むしろ同調した。
「確かに、リウォイン人は嘘吐きが多いからねェ。皮肉と冗談が好きとも言うが」
「私はリウォイン人など、信じられない」
そう言い捨て、アイゼヤという女は出ていった。