短編
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僕には兄のことについて悩みがある。
授業と授業の合間の小休憩、自分の席で教科書をめくっていると、件の兄がきた。
髪を無意味に金に染め、趣味のわからないピアスを、耳や顎につけている。
クラスメイトは遠巻きに僕を眺め、というかドン引きしている。
たしかにこの学校の校則はゆるいけど、ここまでやる人はいないし、やりたい人はもっと別の居場所を選ぶ。
僕の席の机をばんと叩き、睨みつける。実際、それはそれで怖いので、思わずうつむく。
兄は僕に顔を近づけ、耳元で囁く。
「お弁当を忘れていっただろう?あとでちゃんと取りにくるんだぞ。
ちゃんとケンくんが好きなハンバーグ入れてあげたからな」
あいにく、周囲には聞こえていない。この兄はモロ不良な見た目で、なんでかこの性質だった。
僕はもっといい学校にいけたのに、地域ぐるみで警戒される兄のせいでここに落ち着いてしまったし、父も母も忙しい。
黙ってうつむいていると、しびれを切らしたか、また机を叩いて去っていった。
なぜ兄がああなのかといえば、なんてことはない。不良なのは趣味で、僕に対する態度は愛情だ。