短編

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 僕はどうしても、どうしても許せなかった。友達とフットサルに行くとか言う恋人のことが。
 この僕を放っておいて、そんな球遊びが楽しいの?ってもちろん馬鹿にしたけど、趣味を押し付けられて以来なにも言えない。

 暇があればスポーツ観戦、ハイキング、ライブハウス……そんなくだらないことより、僕の事を考えるべきだ。僕は四六時中、彼の事しか頭にないのだから。

 いっそ手足を切り離してやろう。僕はだらけた体を叱咤し、包丁を砥いだり、糸鋸を買いに行ったり頑張った。

 彼が帰ってきた。僕は包丁を持ち、彼に向ける。というに、相手は首を傾げるばかり。

「どうしたんだ包丁なんか持って。なにか切ってたのかい?」

「……今から、君を切り刻もうかなって」

「ははは、まーた変なこと言って!惣菜のコロッケを切るのすら失敗してたじゃないか〜」

 そう言って彼は僕の両手首を片手で掴む。くそっ、無駄な健康優良児めっ、ぜんぜん振りほどけないっ……。

「はいはい、お前にはまだ早いよ。それより飯食った?」

「……お腹空かない」

「まーたそう言ってゼリー飲料ばっかりかよ」

 包丁を取り上げられ、あげく部屋に戻された。僕の脅しなどどこ吹く風と、へらへら笑いやがる。

「目が充血してんなー、夜更かしすんなって言ってんだろ。ほらもう寝ろよ」

「やだ、やめろ!お前が僕の許しなく出かけるから悪いんだ!」

「書き置きしたじゃん。それー寝ろー」

 布団に転がされ、あげく押さえつけてくるなんて本当に最低。
 どうして僕の言うこと聞いてくれないの、意味わかんない!

「うう、やだあ、健康になるのやだあ」

「よしよし、明日は頑張って七時に起きよう」

「やだああ、お前なんていつか刺して僕が車椅子に固定してもてあそぶんだからなあ」

「うーん、なら介助のために鍛えよっか。一緒にジム行くの楽しみ〜」

「そういうとこほんとキライ!」
 
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