短編
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「あっちゃん、久しぶりー!」
休日に自宅でぐうたらしていたら、チャイムも鳴らさずに制服の高校生が訪問してきた。
「お邪魔しまーす」
「待て待て待て、誰だお前」
壊れてそのままにしていたチェーンが仇となり、高校生は上がり込む。
「誰って、タダシだよ。先月高校生になったんだ」
「タダシ!?あのタダシかっ」
そう思い出すこと十数年前。友人女子がヤンチャしてうっかり妊娠出産。当時高二の俺がなぜか面倒を見ていた。その女子とは親友だからだ。それだけの話だ。
友人同士、持ち回りでタダシの面倒を見ていた。産んだアイツも頑張って育てたし、まあそういうこともあるよなっていう話だ。
俺はタダシが小学校高学年になる頃に、転職で地元を出た。
「お前、でかくなったなー。母さんは元気か」
「オレの母さん?あっちゃんのお母さん?」
「お前のだよ。俺のお袋は変な電話で生存確認しとるわ」
「うん、元気。あっちゃんが同窓会に来ないから寂しがってた」
タダシは居間に座り、手土産に地元の銘菓をくれた。
「あっちゃんさ、母さんと結婚とか、しないの?」
「オレとあいつはそういう仲じゃないしなあ。ていうかあいつまだ結婚してないの
か」
タダシは出した麦茶を一口。俺にずいっと近づく。
「あっちゃん、オレのお嫁さんになってよ」
「何言ってんだお前」
エイプリルフールは過ぎてるぞ、と言いかけ、タダシはまくし立てる。
「オレの初恋はあっちゃんなんだ。本気だ、今まで彼女もいたことない」
「いやよくわからん」
「優しくて、ガンタンクに詳しくて、ちょっとドジっ子なあっちゃんがすげえ好きだよ」
「俺そんなにガンタンク詳しくない」
「あっちゃんのお母さんには許可もらったから、ここで家賃光熱費折半で同棲してください!」
「ちょっと何言ってんのかわかんない」
ぐいぐい寄ってくるタダシは、スポーツでもやっていたのか、背丈もあって中年の俺よりたくましい。
「……わかった、じゃあまず普通に付き合お。オレあっちゃんに好かれるよう頑張るから」
そんなに必死にされると、俺も無下に帰れと言えんよ。とりあえず、勝手に許可したお袋に文句をつけたい。