短編
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愛しい妻は実父が好きで、義父は娘が好き。そんな恐ろしい事実を、でも僕は冷静に検証しはじめた。
「パパ、パパあ、そこっそこもっとしてえ」
「ああ、かわいいよ、もっと言ってくれ」
AVよろしく喘いでみれば、お義父さんはたいそう喜んだ。
きいちゃんと僕は身長が同じ170センチ。かつ、きいちゃんはスレンダーで胸も小さい。僕はそこも好きなんだけど。
一方できいちゃん。海水浴に行った時に撮ったお義父さんの写真を見て、僕は言ってみた。
「お義父さんってちゃんと鍛えてて、若いよねえ」
「ジム通いが趣味だからね。私はテニスの方が好きだけど」
「僕もちょっと運動しようかな。家にいてばかりじゃあ、よくないよね」
「いいと思う!初心者向けのジム、教えようか?」
きいちゃんがお義父さんの写真を欲しがったのであげた。
二人は僕を挟んで、禁断の恋を楽しんでいる。ただ二人が好き合っている事を知っているのは、僕だけという、捻れた関係。
僕は二人に捨てられたくなくて、かなりの努力をした。
お義父さんの前では、慎ましやかに振る舞い、時にはきいちゃんの下着も着た。
きいちゃんの前では、ぶっきらぼうな男を気取り、少し強引に彼女を抱いた。一人称も変え、お義父さんと同じにした。
お義父さんが泊まった時は、長めに攻めて、わざと娘の声を聞かせてあげた。
それでも瓦解した。キミは俺を拒絶し、パパは私を抱かなくなった。
捨てられるぐらいなら、捨てた方が良い。
二人は俺に何も言わず会うようになった。
キミが外泊している際に、家にカメラや録音機を置き、あとは俺がその辺を出歩いていれば二人が行為に及んでいる映像など簡単に入手できた。
俺は二人が寝ている間に、プリントアウトした写真と離婚届を置いて出ていった。
それが三ヶ月前。戸籍を確認したところ、離婚はされていた。
が、今日になって二人が俺を訪ねてきた。
義父の車に乗り、ヤブのある車道を走る。人気のない所だ。
「ねえ、私たち、もう一度やり直せない?」
どうやら、離婚理由を友人たちに突付かれているらしかった。
そういえばこの女、俺の資産だけで生活してたっけ。一括で買ったマンションも、相談せず手放してごめんねー。
「もうパパは近寄らせないし、私も反省したから……」
聞き流していると、男から一言。
「なあ、わかってくれないか。娘も心を痛めているんだ。ここまで車を走らせた意味がわかるだろう」
わかるー。俺は女のポケットから盗んだ携帯端末を取り出す。件の写真を転送し、あらかじめSNSで調べていた友人らにメールを作成。
「まーだ言ってなかったのか。お友達に」
「あっ、あんたいつの間に!」
「やっぱ真実をねー、知らせなきゃ」
メール送信完了画面を見せると、女は悲鳴を上げて俺に掴みかかる。
「ふざっふざけないで!どうして、どうしてよおおお」
うるさいから、持っていたナイフで喉を刺した。
男はもっと手強いと思い、もう一本のナイフで眼を刺してから、車内にあったロープで首を絞める。ロープの余った部分をサンルーフから出し、ルーフキャリアに結ぶ。あ、雨降ってら。
荷台を見ると、練炭と卓上コンロがあった。なんだ、死ぬ気だったか。
女の携帯に着信。本当か、なにこれ、どうしたの。まあ色んな人からいっぱい。せっかくなんで、動画を送ってあげた。
携帯を車内に放り、コンロに火をつける。
サイドブレーキを切ってニュートラルに入れ、俺は車外に出た。おおーマニュアル車は進む進む。
そのうち目前の崖に落ちるだろう。
雨の中、車道をとぼとぼ歩く。なんかもう、死んじゃいたいなーって思っていたら、きゅーきゅー鳴き声が耳に入った。
ヤブを覗くと、白と茶のもふもふ。ウサギだった。
何故か腕と脚を縛られている。
「なんだこれ、捨てられたのか」
「きゅっきゅっ」
「うち来る?」
「きゅーっ」
そして俺は、その二羽を拾った。