短編
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昔々、とある国の王様は、一人の少年を買いました。
なぐさみものにして可愛がっておりますと、少年はある日、金の卵をお尻から産みました。
中も純金の卵は、王様が少年を抱くたびに産みました。
貴重な財源として、王様は少年を地下室に繋ぎ、朝な夕な兵士らを入れておきました。
美しい金の卵を産む少年を、王様はガチョウと呼んで可愛がりました。貴重な財源なので、食事や水、休養はしっかり与えました。
ガチョウは毎日泣き、もう嫌だ、死にたいと言いました。
ある日、王様の変わりに見知らぬ兵士たちが来ました。敵国の兵でした。やっと死ねると思ったガチョウですが、敵国は王様の財力の秘密にたいそう喜びました。
敵国の研究室で、ガチョウはどうして金の卵を産むのか、とことん調べられました。
お腹を開かれたり、はらわたを出し入れ、むりやり排泄をさせられたり、はたまた薬をのまされ。
でもよくわからなかったので、敵国もガチョウを財源にすることにしました。
卵だけを産めばいいので、逃げないように手と脚は切ってしまいました。効率よく産むために、尻に管を繋がれ、一日中男たちのものを注がれました。
ガチョウは虚ろな目で毎日のように、ころしてと呟きました。
ある日、大きな音がして見知った兵士が部屋に突入しました。かつていた国の兵でした。
王様の息子である王子様が、ガチョウを見つけて喜び、抱きしめました。
おお我が国の大事なガチョウ。こんな責め苦を受けて可哀想に。だがもう安心だ、わたしが来たからには、恐ろしい目にはあわないぞ。
ガチョウはむせび泣き喜びました。これであの国に戻れる。もう怖くて汚いことはさせられないと。
ああなんて愚かなガチョウでしょうか。王子様も皆と同じ、金の卵が欲しいだけなのに。
しかしガチョウは、王様のもとにいる方が幸せだと思い込んでいたのでした。