短編
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フリリク:エンディミオとフリードリヒ。オチない(トロイメライ)
「いた、いたいぃ……」
エンディミオに殴られた箇所が、時間が経ってから痛んだようだ。
腫れ上がり鬱血する目許は、医者に見せた時は何もなかった。
「お見せなさい」
見かねたケツァルコアトルが、フリードリヒの目許に指を滑らせた。するとたちまち、痛みと鬱血が引いていく。
「あ、りがと……ござい、ますー」
微笑する神に、フリードリヒは思い切って相談することにした。
「あの、どーしたら……陛下に、ぶたれなく、なる……でしょうー」
「そうですね。こうしてはいかがですか――」
ケツァルコアトルの提案に、フリードリヒは慌てて拒否した。
「そそんな恥ずかしいことっ……い、言えるわけ……」
「そうですか」
「それに、そんな、ことで……解決する、わけぇ」
「人の心は、とても複雑なのです。貴方が思うよりもはるかに」
フリードリヒはそつとエンディミオに近づき、それを言おうとした。
が、羞恥が勝り、口を開いたまま固まってしまう。
「んと、あー、その」
「さっさとしろ」
苛立たしげに催促され、フリードリヒは震える声で言い放った。
「あ、あの……陛下、に……申し上げたき、議が、ござい……ます」
「申してみよ」
「……ぶつのも、蹴るのも……わたくし、だけに、してほしい……の、です」
恥ずかしげに顔を真っ赤にして俯き、話すフリードリヒ。
その様子と話す内容に、エンディミオは少し、いやかなり引いた。
「……あいわかった」
エンディミオは頷き、逃げるようにその場から去った。
「よ、かった、のかな?」
その後しばらくの間、フリードリヒは暴力をふるわれることはなかった。近づかれることもなかったが。