短編
□拍手ログ
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破れ鍋に綴じ蓋(トロイメライ)
「新しい妾を入れることにした」
王の突然の発言に、フリードリヒは驚いたが、しかし容易に受け入れた。
自分はもう子を生めないし、かといって王を満足させるような見目でもない。
エンディミオの隣に立つ青年はとても麗しく、かえってフリードリヒも惚れ惚れするほどだ。
「せいぜい仲良くしろ」
「ふあーい」
新しいお友達も兼ねているのだろう。フリードリヒは頷いた。
が、数日後、件の妾は姿が見えない。
「陛下ー、あのお方は?」
エンディミオはああ、と眉をひそめた。
そして吐き捨てるように言った。
「伽に抵抗したため殴った。今朝、国に帰ったぞ」
「あらー、残念ですねー」
やはり、王の手厳しい愛を受けられるのは、自分ぐらいらしい。
フリードリヒはその点において、しばし優越感に浸った。
「っていう夢を見てねー」
「まあ……だいたいの流れは合っていましてよ」
おやつを食べながら、フリードリヒは侍女頭に昨夜の夢の話をしていた。
エリッサは微笑し、まあ妾なんて面倒なことはしないでしょうね、と付け加えた。
「でもねー、なんで優越感なんて感じたんだろー」
「あら、よろしいではありませんか。
あなた様は、誉れ高き我らが王の隣に立つお方。どうぞ、居丈高であそばせ」
「んと、そういうものなの?」
「ええ、陛下だっていつも、そんな感じでしょう?」
エリッサに言われ、黒獅子王の態度を思い出す。フリードリヒはほんの少し、納得した。