短編

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破れ鍋に綴じ蓋(トロイメライ)

「新しい妾を入れることにした」

 王の突然の発言に、フリードリヒは驚いたが、しかし容易に受け入れた。

 自分はもう子を生めないし、かといって王を満足させるような見目でもない。

 エンディミオの隣に立つ青年はとても麗しく、かえってフリードリヒも惚れ惚れするほどだ。

「せいぜい仲良くしろ」

「ふあーい」

 新しいお友達も兼ねているのだろう。フリードリヒは頷いた。



 が、数日後、件の妾は姿が見えない。

「陛下ー、あのお方は?」

 エンディミオはああ、と眉をひそめた。
 そして吐き捨てるように言った。

「伽に抵抗したため殴った。今朝、国に帰ったぞ」

「あらー、残念ですねー」

 やはり、王の手厳しい愛を受けられるのは、自分ぐらいらしい。
 フリードリヒはその点において、しばし優越感に浸った。





「っていう夢を見てねー」

「まあ……だいたいの流れは合っていましてよ」

 おやつを食べながら、フリードリヒは侍女頭に昨夜の夢の話をしていた。
 エリッサは微笑し、まあ妾なんて面倒なことはしないでしょうね、と付け加えた。

「でもねー、なんで優越感なんて感じたんだろー」

「あら、よろしいではありませんか。
あなた様は、誉れ高き我らが王の隣に立つお方。どうぞ、居丈高であそばせ」

「んと、そういうものなの?」

「ええ、陛下だっていつも、そんな感じでしょう?」

 エリッサに言われ、黒獅子王の態度を思い出す。フリードリヒはほんの少し、納得した。
 
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