短編

□拍手ログ
18ページ/40ページ

最強の不器用2(トロイメライ)


 一人では寝室に戻れないにも関わらず、フリードリヒは侍女らを払ってしまった。

 しかもエンディミオが人払いをしたため、二人が居る廊下を通る者は、しばらくは現れない。

 こんな場所に王妃を野ざらしにしておくのはどうかと思われる。
 エンディミオは露骨に舌打ち、フリードリヒの手を引いた。

「いっ……」

 強く引きすぎたらしい。痛みに耐える表情をする王妃に、エンディミオは配慮し、相手の襟を掴む。

「も、申しわ、けござい、ません……」

 フリードリヒの謝罪を無視し、王はただ進む。

 今度は歩みが早かったらしい。フリードリヒは足をもつれさせ、エンディミオの服を掴む。
 心なしか、息も乱れていた。


 仕方なく歩幅を合わせたが、元々体格差が大きく、またのろまなフリードリヒに合わせるのは時間の無駄といえる。

 エンディミオは王妃の方を向いて溜息をつき、足を止めた。
 そしてしゃがむなり、フリードリヒの腰を掴んで抱き抱えた。

「っ、陛下」

「黙れ」

 鋭い命令に口を閉ざしたフリードリヒだが、羞恥と歓喜とがないまぜになって、王に色々と問い質したくなった。

――というのは束の間の話で。
運ばれるというのは楽だ。しかも案外心地好いものらしく、フリードリヒは寝入った。


 眠る王妃に呆れたエンディミオだが、時間も押しているため急がなければならない。

 フリードリヒを抱えなおし、足早に王妃の寝室へ向かう。
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ