短編
□拍手ログ
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最強の不器用2(トロイメライ)
一人では寝室に戻れないにも関わらず、フリードリヒは侍女らを払ってしまった。
しかもエンディミオが人払いをしたため、二人が居る廊下を通る者は、しばらくは現れない。
こんな場所に王妃を野ざらしにしておくのはどうかと思われる。
エンディミオは露骨に舌打ち、フリードリヒの手を引いた。
「いっ……」
強く引きすぎたらしい。痛みに耐える表情をする王妃に、エンディミオは配慮し、相手の襟を掴む。
「も、申しわ、けござい、ません……」
フリードリヒの謝罪を無視し、王はただ進む。
今度は歩みが早かったらしい。フリードリヒは足をもつれさせ、エンディミオの服を掴む。
心なしか、息も乱れていた。
仕方なく歩幅を合わせたが、元々体格差が大きく、またのろまなフリードリヒに合わせるのは時間の無駄といえる。
エンディミオは王妃の方を向いて溜息をつき、足を止めた。
そしてしゃがむなり、フリードリヒの腰を掴んで抱き抱えた。
「っ、陛下」
「黙れ」
鋭い命令に口を閉ざしたフリードリヒだが、羞恥と歓喜とがないまぜになって、王に色々と問い質したくなった。
――というのは束の間の話で。
運ばれるというのは楽だ。しかも案外心地好いものらしく、フリードリヒは寝入った。
眠る王妃に呆れたエンディミオだが、時間も押しているため急がなければならない。
フリードリヒを抱えなおし、足早に王妃の寝室へ向かう。