短編
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結婚式でもらったものの片付けをしていたギドは、珍妙なものを見つけた。細長い竹製の棒で、先に返しがついている。
いわゆる耳かきというものだが、ポチテカをはじめ殆どのアルヴァ人に、耳の穴をほじくる文化は無い。
「わあこわい。封印しておこう」
「それ結構使うぞ。月一回は」
「そ、そんなに!?しんじゃうからやめて!」
「死なねーよ阿呆か!そんなに言うならやってやらあ」
夕星は耳かきを奪い、ギドの頭を掴んだ。
「うわあああこえええむりむりむり」
ギドは妻の膝に頭を乗せ、腰に腕を回し抱きつく。
耳を引っ張られ、穴に棒が入ってくるのを感じる。ますます怖くなり、さらにきつく抱きしめる。
「ああああむりむりそんな長いのっ入らなっいやあらめええええ」
「うるせえ」
三十代の大男が泣きべそをかき、許しを請うている。実に情けない。
それでも夕星は容赦しなかった。
「ちょ、夕星さんだめだってそんなとこ、あっ」
「まあこんなもんでいいか」
「はぁ……はぁ……しゅ、しゅごかった……」
なんとも言えない感覚に、ギドは息を切らせ、脱力している。
口の端からだらしなく涎を垂らし、心なしか目も虚ろだ。
「おら、次もう片方」
「いや無理だって!もう出ないぃ!」
「んなわけあるか!」