短編

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 俺は残飯をのせた皿を片手に、船内下層、階段倉庫の一室の戸を開けた。

 湿って寒い倉庫には、煎餅布団と盥。そして縄で足や首を繋がれた子供がいる。
 子供は不具で、特に頭のほうがやられちまっているらしい。言葉も話せず、にこにこと笑っている。皿をだすと、犬食いでほうばる。

 うちの船は、主に食器の運送を扱う。大事な商品のために安全な航路を。
 不具はヒルコさまの形(カタ)として、こうして船に乗せるのだ。

 特にこいつは、絵に描かれたヒルコさまのように、常ににこにこしているから、今のところ事故はない。

 垂れ流しの糞尿を拭い、ついでに不具の体も拭いてやる。
 俺はち、と舌打つ。尻から白いものが出ている。誰か知らんが、後始末ぐらいやっていけと。

「おら足上げろ……ったく、臭くてかなわねえ」

 掃除までしていくのは俺ぐらいなもんで、さすがの不具も俺の顔を覚えたらしい。自分から進んで服を脱ぐようになった。

 俺も他の連中とやることは変わらねえ。抵抗しない不具は、恰好の女役だ。
 最初は吐いて嫌がっていたが、今はいっちょ前に尻穴だけで果てる。

 という事を同僚に聞いたが、そうでもないらしい。相手によって違うのか。

 出しきったブツを抜くと、不具はあーあー言って俺のを掴む。
 なんだなんだと思ったら、不具自身の穴に、自分で当てがっている。

「お前は娼婦かっつーの」

「ううー、にへへ」





 気が変わった俺は、布団を洗ってやってもいいかなと思った。ついでに不具を、今日だけ甲板に出してやろうとも。

 縄はつけたまま、夜の甲板に出る。どうせ見張りは寝ている。小さな灯りであれば気づくまい。

 うるさくしないよう不具の口を塞ぐが、黙っているようだから離した。
 不具は船べりから、真っ黒い海をのぞく。

 そして俺の方を向いて、にっこり笑った。

「ねー」

 不具は俺の首に抱きつき、船べりに足をかけた。一緒に落ちた。
 激しい水音がしたが、見張りは寝ているようだ。

 不具は俺に口づけた。そんなこと、教えたこともなかったのにだ。

 こんな真っ暗い海じゃあ、不具の顔も見えない。
 だがどうせ、にこにこ笑っているのだろう。俺は不具の細い体を掻き抱いて、沈んでいった。
 
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