短編

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 ワシの名は新田米造!好きな酒のツマミはポテトチップスうすしお味じゃ!

 としおの親戚の家に行くには、村から港へ行き、そこから船で隣島まで行くらしい。領土には入っちょるが、屋敷は遠いのー。

「ヨネゾー殿ぉぉおお!王子の手に、手に傷がありますぞおおお!」

「すまんのう、このとおり」

「これだから山ごもりの蛮族はっ。以後気をつけてくださいよっ」

 正拳突きの練習をしていたとしおの手は、痣で紫色になっちまった。そりゃ爺やさんは怒るわなあ。

 誠心誠意謝ったら、としおや兵どもの擁護もあって許してもらえた。


 船は大きくもない漁船であった。軍船を借りれる持ち合わせは無いようじゃ。

 釣りがしたいのー、と水面の魚を見ていると、としおが何かを見つけた。

「ヨネゾー殿、あの水面に立つヒレ、鮫かもしれませんよ」

「おお、でかいのう」

 まあ鮫は慎重な性格じゃし……と皆でのんびりしておったが、ヒレがどんどん近づき、突然巨大な白鮫が顔を突き出し、ノコギリのような歯で船の縁に噛みつきおった!

「なんじゃー!?」

「あれは、魔獣プロゼール!なんて運の無い……!」

「王子!船の縁から離れてください!」

 兵どもはとしおを囲み、盾を取る。防御を固めるのはいいが、陸に着かぬ間に船が沈むぞ。鮫は巨体で体当たりを繰り返しよる。

 ワシは包丁を持ち、再び突き出された鮫の鼻先を掴んだ。

「よっヨネゾー殿!?」

「こうすると、鮫は混乱するんじゃ!」

 鮫は鼻先にセンサーのようなモンがあって、そこを撫でられると弱いって南米にいた頃歯磨き粉と交換に謎の中国人に教わったのお。
 ワシはおろついた鮫の目を包丁で刺し、叫んだ。

「今じゃ!モリでも剣でもぶっ刺せ!」

 兵どもが雄叫びを上げ、水面に剣を打ち下ろしていく。水が真っ赤に染まったころ、ようやく船のひどい揺れも止まった。

「昼は鮫の唐揚げじゃのう」



 縄で括った鮫を陸まで揚げ、漁師たちと分け合った。ぶつ切りにした鮫を小麦粉でまぶして、油で揚げて、塩で食うてやったわ。
 素人が取った魚は、寄生虫とかが怖いからの、とにかく揚げろと謎の中国人が言うとったわ。

「はぁー新鮮な魚は美味いのー」

「さすがです、ヨネゾー殿。怖いもの無しですな」

「尊敬します、ヨネゾー殿」

「怖いから食うんじゃよ。としおや、もっと食えや」

 そういや、魔獣ってどのくらいいるんじゃろ。
 
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