短編
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散歩だっ、と思ったら、ご主人に引っぱられて違う道だった。
着いたのは病院だった。ご主人のじゃなくて……私の。
「ぐううういやだああああ」
「いいから動けバカ犬!お前いくつだ、子犬じゃあるまいに!」
いくらリードを引かれようとも、絶対に動きませんー!注射だ絶対間違いなく!
私が引っ張ったらご主人倒れちゃうから、絶対動かないもんね!
「あなたまた自分の主人を困らせているのですか」
すごい力でリードを引っぱられた。思わずつまずき、ご主人の足元に転ぶ。あうう。
「あ、シェパさん」
「病院の前で暴れるのはみっともないですよ、バカゴールデン」
目の前にいたのは、私の同い年の介助犬。黒いシェパードだった。
シェパさんとは、同じ訓練所にいたから、人でいうと幼馴染?みたいな感じ。
「勝手にリードを引くのはやめてくれないか」
「それはすみません。
ああ、ご主人様、お言いつけ通りにしました!褒めてください褒めてください」
相変わらずシェパさんは自分の主人以外には無愛想なんだよねー。うちのご主人睨まないでほしいんだけど。
「うちのこがごめんね。ごきげんよう」
「……こちらこそ、お先にどうぞ」
シェパさんの主人は確か、脳性まひだってご主人が言ってた気がする。
まあこれ以上悪くならないって聞いたから、きっと大丈夫だね。
「おわったら、公園、いこうね」
「はいっ、ご主人様」
「よし、行くぞバカ犬」
「うううう」
四つん這いで抵抗したけど、ついにお尻を叩かれた。これはご主人が本気で怒ってる証拠だから、泣きながらだけど頑張って入るうううう。