短編
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王家一家日常(トロイメライ)
フリードリヒの日課には必ず昼寝の時間が入っている。
時間におおらかな方のアルヴァ人は、仕事の昼休憩は長めに取るが、それは一般庶民の話であって。
王族でお昼寝なんてかましているのは、フリードリヒぐらいのものだ。特例が許されているのは、王妃の体があまり丈夫ではないこと、無趣味で暇なことが理由だ。
午前の会食を終えて、お休みだーと寝台にあがると、侍女に呼び止められる。珍しく、双子が尋ねてきてくれたという。
まだ七歳を迎えたばかりで、母親には甘えたい盛りだろう。雑事で一週間近く会えずにいた。フリードリヒは喜んで、双子を出迎えた。
「きゃーっお母様、お母様あ」
「お二人とも、お元気そうでよかったあ」
突進してくる娘をなんとか受け止め、じっとしている息子を撫でて抱き寄せる。おずおずとくっつくルートヴィヒを見て、双子なのに似てないと改めて実感した。
「お母様の寝室って、入るの初めてですわ」
「……寝間着」
「お母様、もう眠たいですの?」
せっかくお話したいのに、と落胆するエバを見て、フリードリヒは提案した。
「んと、じゃあ二人とも一緒にお昼寝しますー?」
王妃の寝台は、元気いっぱいの双子が転がってもあまりある広さだ。
エバは枕のそばにたくさんあるぬいぐるみを見て、首を傾げる。
「お母様、ぬいぐるみがお好きですの?」
「んと、話すと長いんだよな……陛下がくださったんです」
えーっ、と双子は驚き、囁き合う。
「嘘ですわ」
「母上が吐くにはくだらない」
「欲しかったら、差し上げますよー。ていうか、持っていってください」
せっかくだから、と二人はぬいぐるみを一体づつ貰った。全く不要だが。
フリードリヒが寝そべり、隣に双子を寝かせる。ルートヴィヒが王妃の結婚腕輪を見つけ、興味深げに観察する。
「殿下もいつか、お嫁さんにつけてあげるんですよー」
「……お嫁さん」
「良い人に逢えると良いですね」
そう言われても、特に実感は湧かない。どうせ父王が決めてしまうだろうし、とルートヴィヒは妙に達観していた。