短編
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神々とフリがわいわいpart2(トロイメライ)
いつものお昼寝の最中、フリードリヒはまた奇妙な夢を見た。
境界の白い空間にぽつねんと立っており、遠くに鳥の集団があった。
また鳥さん会議だー、とフリードリヒが近づく。
鵜(ペリカン)が青年の姿を目敏く見つけ、鵲を責める。
『おい“漆黒による変革”またも切断を忘れたか』
『おう、ついうっかり』
あっさり認めた鵲を、周囲の鳥たちは馬鹿めと罵り、さくさくとくちばしを刺していた。
フリードリヒは可愛いなあと和みながら、お目当ての翡翠(かわせみ)を手に乗せた。
「ケツァルコアトル様ー、お久しぶりです」
『ええ、元気そうで何よりです』
「おかげ様でー。あのね、僕の子どもたちすっごく大きくなったんですよー。見てほしいなあ」
『もうそんなに……人の時は早いものです。わたしにとって、あなたはずっと可愛い子ですが、そう扱っては失礼でしょうね』
「いいえ、ケツァルコアトル様は、僕にとっては母様みたいで、大好きですー」
『それは……ええ、喜ばしいですね。ですが母親ですかそうですか』
ほのぼのとお花畑な会話をする二人を差し置き、鵜が進行する。
『では裁定者に代わり、吾輩が執行する。
まずは魔女連中、何故毎度、全員集まらぬ』
フリードリヒが前回見た時とは、顔ぶれが違っていた。鵜と鵲、翡翠と禿鷲はわかる。
まず隼(はやぶさ)に木菟(みみずく)に人鳥(ペンギン)がひとかたまりにいた。
人鳥の物珍しさにフリードリヒが近づくと、人鳥はよちよちと歩き、だが転んでうつ伏せのまま動けない。
「かっ、かわいい……!」
思わず抱き起こすと、鵲がからかい、人鳥の正体を言った。
『おう、それは“青き汀(みぎわ)の宴”ぞ。海で溺れた者を引き込み、魚にしてしまう』
『誤解を言うでない鏡よ。わしは海底の秩序を保つだけだに』
くわくわと鳴く人鳥は、そんな恐ろしい存在には見えない。だが眼は血が凝ったように紅く、悪神と分類されるのだろう。
『そちらの木菟さんはー?』
『わらわは“砂塵に散る橙”と申しまして。――気安く触れないよう』
撫でようとしたフリードリヒの手を、厳かな女声がぴしゃりと止める。素直に謝ると、木菟はつんけんによろしい、と返した。
『ショロトル、久しいですね』
『ああ、蛇神よ。休止状態に入ったと聞いたが、何があった』
『貴方が知らずとも良いことです。さあショロトル、この子が私の愛しい子です』
隼はとても親しげに、翡翠と会話をする。
友達なのかと聞けば、翡翠曰く飼い犬のようなものとのこと。
(ケツァルコアトル様って、他の神様には厳しいよなー)