短編
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王不在とあって、大臣以下、官僚たちは忙しそうに動き回っている。
フリードリヒの予定調整もエンディミオがしていたため、宰相ダイケンが代わりに行なっていたが、相談をする暇もなく破たんが出始める。
「あう、ダイケン殿、お昼寝の時間をくださいー」
「も、申し訳ありません!何分陛下がこればかりはと譲らなかったもので……」
「……あの、んと、まだ陛下にお会いするのはいけませんか?」
「ええ、まだ予断は許さぬ情況です。とはいえ、陛下も練磨の軍人。すぐによくなりましょう」
ダイケンは安心させるように微笑むが、フリードリヒは俯いたまま。
「だって、一人は逃したのでしょう?」
「……王妃様、一体どなたからそれを」
フリードリヒが小さい鏡を指で弾く。ダイケンは唸り、渋々頷く。目前の人物が、神の寵愛を受ける預言者だということを失念していた。
「目下調査中です。我らアルヴァの民の誇りに賭けましても、必ずや陛下を害した敵は討ちます」
「きっと、まだ終わらないと思います」
王妃は鏡を注視し、ダイケンに告示した。
「だって、その人は顔を知られてますものー。だから、もう一回来ます」
大人達の不安は、双子にも影響を及ぼしていた。鬼のいぬ間とばかりに、子供たちがこっそり母に会いに来た。
「お母様、大丈夫ですの?」
「大丈夫ですよー。皆が守ってくれますものー」
「お母様のことはぜーったい守ります!ねーお兄様!」
王子は何時ものように、無言で頷いた。が、どこか思いつめているようにも見える。
フリードリヒは二人を引き寄せ、精一杯の愛情を込めて抱きしめた。
「お母様、あの」
「大丈夫、陛下はこんなことで絶対に死なないし、死なせませんものー」
抱えていた不安を見抜かれたエバは、思い切り母に甘えた。
「だって、情けないんですもの。お父様に頼らなくてもいいように、もっと強い女になりますわ」
「今のままでも、とーっても頼りがいがありますよー」
「全然駄目ですわ!ねえ、お兄様!」
「……子どもだと言ってしまえばそれまでですが、それでも無力であることは否定できません」
それでも双子はよくやっている方だ。王に代わることはできなくとも、国交や勉学はきちんとこなしている。
「えへへ、かわいー」
「かっ、可愛い!?可愛いですってお兄様!」
「……よかったね」
ただルートヴィヒは、短剣をくわえた鵲を見ていた。