短編
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ルートヴィヒによるアザゼル調教(FB)
アルヴァ王家には、長い歴史のうちにできた、様々な伝統がある。そのひとつとして珍妙なのはルートヴィヒが手元で捲る本。
これは王家にひっそり伝わる尋問、拷問、調教を記したものだ。
好戦的なアルヴァ王達は、えげつない実験を繰り返し、後世のために記していった。もちろん、父エンディミオもこれを書いている。
ルートヴィヒは驚くアザゼルの手を乗馬鞭で叩き、自分の優位性を示す。
たとえ相手が神であろうと、臆してはいけない。
『な、な、何をするのだっ』
「封印された身で、口答えとは良い度胸だな」
アザゼルが扉の向こうに逃げぬよう、ルートヴィヒは冷酷非情な声音で跪けと命じた。
『な、なぜわたくしがこんな目に……』
「また鞭打たれたいか?」
困惑し、正座するアザゼルの白髪を掴む。本を参考に、言葉で責めていく。
「もう一度言ってやる、私に隷属しろと。私の命令に従い、ただ無為に動けば良い」
『わたくしに利点がないではないか……』
「罪を犯した下賤が、利益を求めるなど笑わせるな。
お前なぞ家畜の糞にも劣る。そんな価値もない糞以下を使ってやるというのだから、私は優しいと思うが」
鞭の先で白い頬をぺしぺし叩く。淫逸の神は屈辱に震え、奥歯を噛み締める。
「お前の主人が私であることを認識しろ。そうすれば羽虫程度の扱いにはしてやろう。何が神か、笑わせる」
『うう……誰が人間の奴隷になるなど……』
「奴隷は大切な人的資源だ。お前のようなものと同列にするな」
『なっ、な……』
ルートヴィヒはもう一度鞭を振るい、アザゼルの膝を軍靴で踏みにじる。
「さっさと返答しろ」
『ぐ……』
冗談じゃない、と返したいところだが、アザゼルの思考は乱れるばかり。人間風に言えば、動機が高まる。そんな感覚。
決して不快ではないのだ。侮辱され、いいように扱われているというのに。
むしろ期待感しかない。アザゼルは知っていた。痛みを消すには、さらなる痛みを受けるしかないと。淫逸の神は口角を上げ、歓びに震える声で誓った。
『……喜んで、旦那様』