短編
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会話が弾み、昼寝も忘れて親子は他愛もない話を続けた。
ルートヴィヒは人の話を聞くのが好きで、話すのは少し遅いということ。エバは話すと止まらず、相づちや返しが早く的確であること。
今まで知れなかった子どものことがわかり、フリードリヒは嬉しくなった。
「お母様の宝石箱って、黒い石ばっかりですわ」
「エバ、これは黒耀石だ」
「お兄様ったら物知り」
和みまくっていると、どかどかとした足音が聞こえてくる。
呼びかけもせず、国王エンディミオが扉を蹴破ってきた。
何事か訊ねる前に、黒獅子王は双子に向かって怒鳴った。
「貴様ら史学を放って何をしている!」
「あ、あの教師……お父様に言うなんて……!」
どうやら双子は、勉強をさぼって母を尋ねていたようだ。フリードリヒは慌てて子供を庇う。
「あああの陛下、ずっと居させたのはわたくしですので、あの、あんまり怒らないでー……」
「黙れ!継承者を無為に甘やかすな!」
「あう、でも殿下たちは、お話に来ただけです。今日だけは、わたくしのせいですから」
エンディミオは舌打ち、双子の襟首を掴んで追い出した。
妃の寝台に座り、折檻が始まるかと思いきや、王は溜息をついた。
「……厳しすぎるか?」
「まだ小さいから、可哀想で」
なにも子が可愛くないわけでは無い。だが王の子なれば、誰よりも賢く強かな人間にしなくては。なにもせず甘やかす方がよほど酷いのだ。
「私が厳しくする分、そなたが甘やかせば良い」
「えー、でもそれは陛下がお可哀想」
「この年で可哀想も糞もあるか。ただ分別はつけておけ」
「はあい。んと、じゃあ陛下はわたくしが甘やかしますのでー」
脳天気に言い張り、夫の膝に手を置く。甘やかされた覚えなぞないわ、とエンディミオは妻の首に手刀を打ち込んだ。