BL小説集

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 エンディミオが部屋から出ると、宰相をはじめ、大臣から侍女、部屋の警備をする衛兵までもが、王を見つめていた。


「何だ」

 代表とばかりに、ダイケンが一歩前に出て発言。

「陛下、よもやあの方に、下手な事は吹き込んでいないでしょうね」

「吹き込むも何も、特に話すことなどなかった」

「今、王妃様は繊細な時期です。むやみに傷つけるような事をしては……」

 馬鹿馬鹿しい、とばかりに、エンディミオは背を向ける。脚は執務室へ。

「陛下!」

「確かにあれは、馬鹿で無知で、あげく文句垂れだが、少なくとも私の前で泣き言をほざいた事はない。ましてや、泣くこともしなかった」

 それだけを言い残し、エンディミオは去った。
 仕事が残っている宰相や大臣も、王の後を追う。






 湯浴みを終え、顔に付着した甘味や紅茶を落としたフリードリヒは、兄からの手紙の返事を綴っていた。

 難しい言い回しは書けないが、単語のつづりならば、なんとかなる。

 兄アレックスもそれを理解しており、非常に簡単な言葉だけを繋ぎ合わせた内容だった。

 涎を垂らさぬよう、気をつけて書いていると、卓上に翡翠が現れた。

「ケツァルコアトルさま」

 この翡翠は、常にフリードリヒの傍にいるわけではない。

 一日に数回現れ、フリードリヒが起きていれば、軽い会話をするのみだ。
 
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