BL小説集

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 それを聞いた医師が、木製の折りたたみ式椅子を組み立てる。

「王妃様、こちらに……恐らくは筋肉痛でしょう」

 座ったフリードリヒは、経験の無い痛みに不安がった。医師はひざまずき、細い脚を軽く揉んでやる。

「泣くほど痛みましたら、言ってください。歩けるなら、大丈夫です。暑さに慣れるためにも、なるべく毎日歩きましょう」

「……ふうん」

 正直、痛みには慣れかけていた。
 どちらかといえば、身体中の痣や、酷く扱われた肛門の方が痛みは上だ。

 医師はさらに脈を測り、眼を診察。真剣な目つきは、異常は絶対に逃さないと言わんばかり。

「熱中症は大丈夫そうですね。なるべく水分を多く摂ってください」

「はあい……くあぁ……ああ」

 もはやフリードリヒは、医師の忠告を半分も聞いてはいなかった。意識を現実に留めようと必死だ。

「……もう限界かしら」

「ですかね。まあ初日はこんなものでしょう」

 フリードリヒを半ば無理矢理立たせ、寝室へと戻る。

 エリッサは妃を部下に任せ、医師と小声でやり取りをする。

「これから、さらに眠る時間が延びます。その末は、永劫の眠り、静かな死です」

「なんとかなりませんの?せめて、世継ぎが生まれるまで」

「その為に、私は呼ばれました。お任せ下さい、術はあります」
 
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