BL小説集

□トロイメライ
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 だからこそ、神憑きの伝承は知らぬことが多い。

「私の失敗だと思っているのでしょうけど、教会が何もしないならばそうするべきだった。……ゆえの罰かしらね」

「貴方が間違っていたとは思いませんが、呪いはまだ……」

「ええ、まさかこれほどとは。くふふ、だからこそ楽しみましょうよ」

 ヘルガは美しい顔を歪ませ、右肩を力強く掴む。
 その姿を憐れみ、バスティアンは行きましょう、と歩を進めた。

「おほほ、しかし我らが心配したとて仕方ないわ。そんなことを思案するなら、アルヴァとサイーラをいただく方法を考えるもの」

「またそんなお茶目なことを……ヘルガ様は、楽しい方ですなあ」

 長年、勢力を拮抗し合う王たちは不敵に笑い合う。






 召し替えたエンディミオは、フリードリヒの服の襟を引っつかみ、ずんずん歩む。

 侍従たちは王の邪魔をするわけにもいかず、フリードリヒの容体を見ながらついて行く。

 だが予定通り、婚礼儀式を行う式場に着いた。

 円形のテーブルには、各国の要人、貴族、大臣の姿。

 奥の舞台には式を取り仕切る司祭が待っていた。

 エンディミオにされるがまま、もたつき歩くフリードリヒに、同情と哀れみの視線が向けられる。
 
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